色温度?何それ? というひとは、残念ながら上級者には該当しない。 ここで引き下がるもよし、理解して前に進むもよし、それはアナタが決めることである。
エネルギー0(ゼロ)の状態で真っ黒となる理想的な物体を想定する。 この世に存在しない仮想の物体なので、わかりにくければ鉄の塊を想像してもよい。 どんどん熱を加えていくと、ドス黒い赤から明るい赤へ、さらに温度が上がると黄色になり、もっと温度が高くなると青白く輝くようになる。 このとき放つ光の色を数値化したのが色温度である。単位はK(ケルビン)で表す。 エネルギー0(ゼロ)で真っ黒だから、0ケルビンは絶対0度(摂氏マイナス273.15℃)となる。
カラーフィルムの多くは、太陽光を基準に作られている。
日中の太陽の光を色温度で表すと5500Kとなる。
これより色温度が高い光の下では青っぽく写り、色温度が低い光では黄色から赤っぽく写る。
天空光(青空)の色温度は高く、朝夕の太陽は色温度が低い。
人間の目は高性能で、都合よくできていて、光の色温度に関係なく、白は白、赤は赤、青は青として認識できる。
ところが、化学製品のフィルムや電子の目である撮像板は、色温度によって、元の色が白でも白と感じない。
色温度が高ければ青く感じ、色温度が低ければ黄色く(あるいは赤く)感じるのである。
(色温度は、通常の温度と違って熱さを表すものではない。100Wの電球の色温度は約3000Kだが、そんなに熱くはない。)
この概念は、いくら丁寧に説明しても、理解できないひとにはまったく理解できない。 もし、ここまで読み進んでまったくピンッ!とこなかったら、もう少し実践的な体験を積んでから再挑戦してほしい。 悲観しなくても、いずれわかる時が来る。
フィルムとデジタルで補正の仕方は変わる。
フィルムの場合は、通常は色温度変換(LB)フィルターを使う。
LB(ライトバランシング)フィルターはミレッド値を元に算出する。
ミレッド値=(100万÷色温度A)−(100万÷色温度B)
大抵LBフィルターの数値はデカミレッド単位になっているので、算出値の1/10を使う。
小難しい話だが、プロのカメラマンは、ズーッとこの計算を繰り返してきた。
フィルムを使ってシビアな色補正をしようとする限り、この面倒な計算から解放されることはない。
それに対して、デジタルカメラの色温度補正は簡単だ。
一般的な撮影なら、AWB(オートホワイトバランス)モードにしておけば、カメラが自動的に補正してくれる。
面倒なミレッド値の計算などは必要ない。単一光源ならマニュアルで強制的な補正もできる。
その場の色温度がわかれば、強制的に色温度をケルビン(普通は100K)単位で設定できる機種もある。
万一判定をミスしても、すぐに撮影画像を確認することができるので、色温度の原理さえ知っていれば、その場で修正できる。
デジタル式は色温度補正に強い。
フィルムの場合は、現実のスナップ撮影で細かく色温度を補正することは不可能である。
リバーサル(スライド)フィルムと違って、ネガフィルムはプリント時にある程度カラー補正される。
ネガフィルムは高感度になるほど「演色性」といって、色温度の違いが緩和される性質を持っている。
ISO800の高感度フィルムは、タングステン光源の披露宴会場でもストロボを併用することで、違和感の少ない写真を撮ることができた。
やや黄色味を帯びた写真となり、かえって会場の雰囲気が出てよかったがいまでは使われなくなった。
デジタルなら、AWBモードで撮影してもそこそこ補正された画像が得られる。
その場でテストしてダメなら、撮影する会場が電球照明のときは「タングステンモード」に固定する。
色温度で設定するときは、3000K前後にすると、目で見た感じに写るはずである。
固定モードは、状況が変わったときには、忘れずにクリアすること。
蛍光灯照明は、人間の目で見る限りは太陽光とほとんど区別がつかない。
色温度は5500-6000Kで、数字のうえでは太陽光とほぼ同じである。
ところが、フィルムで撮影すると、蛍光灯の照明は緑がかって写る。
デジタルでも同様の傾向が見受けられる。
これは、蛍光灯の光を分解すると、輝線スペクトルといって、シアンとイエローに強い光の輝きがあるためである。
シアンとイエローを足すと、グリーンになる。この輝線スペクトルは、人間の目には感じない。
だが、化学製品のフィルムや電子の目の撮像板には写ってしまうのだ。
この問題は、色温度以上に理解されにくい。
いくら「蛍光灯の光は緑色なんだよ」といっても、人間は自分の目で見えないものは信用しようとしない。
あるプロに言わせれば、「一般のひとに言っても理解させるのは無理」だそうである。
蛍光灯にも種類がある。白色・昼白色・三波長D・三波長N・電球色などで、すべて補正値が違っている。
フィルムの場合は、補正データとにらめっこをしながら、補正フィルターを何枚も用意することになる。
デジタルカメラには補正機能が内蔵されているが、白色と昼白色の2種類程度にしか対応していない機種が多い。
ホワイトバランスがカスタムで設定できるモードが付いていれば、補正の幅は大きく拡がる。