ブライダルのロケーションフォトは、通常のポートレート撮影のようなわけにはいかない。
ドレスや打ち掛けなどの衣裳と、ヘアメイクの問題が付いてまわるからである。
これらの手配や交渉は、第三者が首を突っ込む領域ではない。
撮影場所が式場なら、当然そことの交渉も必要だ。
衣裳を式場の衣裳室や提携店で借りる場合は、使用する場所の制限がある。
式場の建物の外に持ち出すことは、大抵の場合できない。
挙式当日でなく前撮りともなれば、料金の問題も発生する。
段取りは、すべて新郎新婦に任せ、日時だけ合わせるほうが無難だ。
式場で専属のカメラマンが撮影する場合、撮影ポイントは大体決まっている。
毎回同じことをやっているわけだから、手際がよいし失敗もない。
初めてその場所で撮影するアナタは、かなり不利な立場である。だが、そう心配することはない。
最近の式場は、ロケ撮りできるような造りになっている。
建てる前に撮影を考慮した設計をするからで、感の鋭いひとならすぐにポイントを見抜くことができるだろう。
係のひとがそばに付いているなら、取り入って積極的に情報を聞きだそう。
いつも撮影時には入っている照明のスイッチが、何故か今日に限って切ってあるかもしれないし・・・
ロケーションフォトで大切なのは、自然なポーズと表情である。
当然、それを引き出すための雰囲気作りが、写真の出来を左右する。
ストロボを正面から直焚きして、せっかくの雰囲気をブチ壊すようなことをしてはいけない。
ストロボの直焚きは御法度である。バウンスで使う場合でも弱く当てる。
アドアマのなかには、アイキャッチを入れるためにストロボを正面焚きするのがテクニックだと思っているひとがいるが、
とんでもない誤認だ。針で突いたようなアイキャッチなどない方がマシである。野鳥の撮影と混同してはいけない。
できるだけ、その場の光を利用して雰囲気を出すよう心がけるのが、ロケーション撮影の極意だ。
衣裳の持ち出しOKがとれて野外で撮影する場合は、開放的なシーンと表情のアップと織り交ぜて変化をつける。 同じ焦点距離のレンズで、いつも一定の距離で撮り続けると、観光旅行の記念写真みたいになってしまう。 ワイドレンズで開放的な空間を演出したり、望遠レンズで背景をボカシたり、距離感に変化をつけるのがミソだ。
被写体に動きが出る演出も大切である。
本職のモデルと違い、素人さんは自分からポーズをとることはない。
ブーケを空高く投げ上げたところをワイドレンズで仰角ぎみに狙うとか、
手をつないでダンスのようなポーズをとらせるとか、こちらがリードして演出する。
ロケーションフォトの最終的な仕上げは、大抵は写真集である。
ストーリー性と画面の変化を念頭に、とにかく撮りまくること。
上手に巧く撮るよりも、ブレたりボケたりしてもいいから、その場のフィーリングを大切にしたい。
もちろん、全体を共通して貫くのは、二人の幸せいっぱいの明るい笑顔である。
それを引き出すために、いかにテンションをあげていくか―
プロとアマの違いは、撮影技術ではなくこの演出力にある。